リング製本のススメ
アマオケで避けて通ることが難しい楽譜の製本。
多くの方が糊で器用に製本していますが、シワが寄ったり斜めになったり、苦手意識を持つ方も多いのではないでしょうか?
また、ボウイング変更を周知させるために全ページの写真を撮る、譜めくりの都合で楽譜をパッチワークする、といった作業に不便を感じることは少なくないと思います。
そんな方々に、さらに簡単・きれい・便利な製本法としてリング製本をオススメします。
以下のような悩みに心当たりのある方はぜひお試しください。
リング製本とは?
リング製本は、楽譜にルーズリーフのような穴をあけリングで綴じる製本法です。
製本手順
基本的な手順は以下の3ステップで構成されます。
- 楽譜に穴をあける
- 楽譜をリングで綴じる
- 楽譜を貼り合わせる
詳しい手順はこちら。
従来の製本法のおさらい
リング製本の特徴を紹介する前に、現在主に採用されている製本法の特徴を整理します。
ここではアマオケ界隈でメジャーな製本法
- 糊やテープのみを用いた製本(糊製本)
- スケッチブックを用いた製本(スケッチブック製本)
を取り上げます。
糊製本
糊製本は、糊とテープだけで楽譜を本の形に貼り合わせる製本法です。
糊一本から始められる手軽さが最大のウリです。
しかしその手軽さの反面、
- 仕上がりが貼り合わせの正確さに大きく左右されるため器用さが求められる
- 背表紙がむき出しになるため見栄えが悪い*1
- コピー用紙以外に支えがないため書き込みしづらい
などの欠点があります。
製本者ごとに独自のノウハウがありますが、本質的な特徴は共通しています。
スケッチブック製本
スケッチブック製本は、楽譜をスケッチブックに貼り付ける製本法です。
本の形をスケッチブックで担うことにより、上述した糊製本の欠点が解消されます。
しかしスケッチブックに依存することは必ずしも良いことばかりでなく、
- 製本のたびにスケッチブックを買わなければならないため1冊あたりのコストが高い
- スケッチブックのページ数以上に製本できないためページ数の調整が難しい
といった欠点が新たに発生します。
共通の課題
また両者に共通して言えることですが、製本後の加工の難しさが欠点として挙げられます。
ページを挿入できない
例えば譜めくりのタイミングを調整するために、めくる前後の何行かを参照したいといった状況がよく起こります。
しかしこれらの製本法ではページを後から挿入できないため、
- 参照したい箇所をコピーして、楽譜の僅かな余白にパッチワークする
- 上部と下部で別々に譜めくりできるように、ページに切り込みを入れる
といった苦肉の策を取らざるを得ません。
冊子を分解できない
また、ボウイングや書き込みを周知するために楽譜を電子化したいといった状況も頻発します。
そんなときも、これらの製本法では冊子を後から分解できないため、
- 各ページを逐一カメラで撮影する
- 各ページを逐一手作業でスキャンする
といった煩雑な作業が発生します。
リング製本のメリット
リング製本はその名の通り、リングで綴じることが最大の特徴です。
この特徴により、糊製本やスケッチブック製本にない様々なメリットが生まれます。
不器用でもきれいに製本できる
手順を追うと分かる通り、やっていることは
- 穴をあける
- 綴じる
- 貼り合わせる
だけです。
そのため、糊製本のような特殊な技術や器用さは要りません。
完成時の質を支配するのは穴をあける作業ですが、ガイドがついているので器用さによらず正確に穴をあけられます。
楽譜の貼り合わせに多少の器用さを要しますが、本の形はリングが担ってくれるため糊製本ほど仕上がりに影響を及ぼしません。*2
見栄えがいい
表紙と裏表紙は厚紙で覆われ、背表紙はリングで綴じられているため、非常にスッキリしています。*3
糊製本は背表紙の蛇腹をむき出しにするかテープで隠す必要があるため言わずもがな、商品のデザインをそのまま使わなければならないスケッチブック製本と比べても楽譜らしさが出て見栄えがいいです。
*4
ページが開きやすい
糊製本では貼り合わせの抵抗で180度綺麗に開かないことが多いですが、リング製本ではすんなり180度開いてくれます。
またリングの滑りが良いので、譜めくりで引っかかることもありません。
書き込みしやすい
表紙と裏表紙が下敷きがわりになるので、端のページでも書き込みしやすいです。
保守しやすい
リング製本で特にオススメしたいポイントです。
製本後も分解できるので、糊製本やスケッチブック製本で難しかった次のような保守が容易になります。
ページの追加・差し替えができる
譜めくりタイミングの調整で前後の楽譜を参照したくなったら、同じ表裏ページの組を作って挿入すれば解決です。
また、曲順の変更、ボウイングの大幅な変更などにより楽譜の新調が必要になっても、2ページ(表裏1枚)単位で追加・差し替えができます。
ページをADF(原稿自動送り装置)でコピー・スキャンできる
楽譜をリングから外せば、ADFにセットしてボタン一つでコピー・スキャンできます。
スキャンしてPDFにしてしまえば、パート員にメールで送るだけでボウイングや書き込みを周知できます。
また、演奏会後に楽譜を丸ごとスキャンしておけば、書き込み付きの楽譜を半永久的に保存できます。
楽譜以外の書類も一緒に綴じられる
練習日程、本番のタイムスケジュール、練習メモなど、楽譜以外の書類も穴をあけてしまえば一緒に綴じて管理できます。
また、ポケットやインデックスなど、ルーズリーフ界隈の便利グッズもそのまま流用できます。*5
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(2018/06/26 追記)演奏会後に束ねて保管できる
演奏会が終わった後も、次に同じ曲を演奏するときの参考、演奏会の思い出、…などいろんな理由で楽譜を残しておきたいものです。
そんなときもリング製本なら、過去の楽譜を全部束ねることで散らからずに保管できます。
演奏会が増えていくと厚みが増すので、リングで綴じるのは難しくなります。 チューブファイルで綴じてもいいでしょうし、僕は紐で綴じています。
コクヨ ファイル チューブファイル ロングボディとじ具 2穴 B4縦 40mmとじ 400枚収容 青 フ-614NB
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また、楽譜だけでなく演奏会のチラシやプログラムも一緒に綴じるのもおすすめです。
どの演奏会の楽譜だったか思い出せるので、思い出話が盛り上がることうけあいです。
リング製本のデメリット
ここまでリング製本のメリットを紹介しましたが、デメリットもいくつかありますので紹介します。
その1: 初期投資が必要
道具(パンチ・リング・ジッパー)を揃えるために、2000円ほどの初期投資が必要です。
ただし糊製本のテープ、スケッチブック製本のスケッチブックと比べ消耗品が少ないので、長期的に見ればランニングコストで挽回できます。
また、パンチとジッパーは複数人で使いまわせるので、パートや楽団で共有すれば初期投資を分散できます。
その2: A4より大きい楽譜の製本にコツが要る
パンチのガイドがA4サイズまでしか対応していないため、B4サイズの製本に少しコツが要ります。
その3: 余白の狭い楽譜の製本にコツが要る
背表紙側に穴をあけるので、1cm程余白が必要です。*6
そこまで偏った印刷はそうそうお目にかかりませんが、自分で裁断した場合など注意が必要です。
なお、左右どちらにも余白がない場合には縮小コピーが必要ですが、穴を開けない側に十分な余白がある場合はそちらを活かして製本できます。
具体的な方法は改めてご紹介します。
おわりに
主な製本法とリング製本との比較を表にまとめました。
糊製本 | スケッチブック製本 | リング製本 | |
---|---|---|---|
製本の容易さ | △ | ◎ | ○ |
見栄えの良さ | △ | ○ | ◎ |
開きやすさ | △ | ◎ | ◎ |
書き込みやすさ | △ | ◎ | ◎ |
保守しやすさ | △ | △ | ◎ |
規格外用紙への対応 | △ | ◎ | ○ |
イニシャルコスト | ◎ | ○ | △ |
ランニングコスト | ○ | △ | ◎ |
リング製本はイニシャルコストこそ犠牲にしていますが、従来法のメリットを損なわないまま保守性を高めた製本法と言えます。
まだ従来法の完全上位互換とは言い難いですが、ルーズリーフ感覚で製本できる手軽さ、楽譜を追加・分解できる便利さを味わいたい方はぜひお試しください。